人々がジェームス・ブッカーを呼ぶ時に、或いは彼を表現する時に使った愛称は、さまざまである。
まず、"Little Booker"。ブルース・ミュージシャンが外見の特徴を名前にするのはよくあることであるが、ブッカーは写真ではそれほど小さくは見えない。それに、何しろ、10度の和音をつかむ大きな手の持ち主である。上半身裸の写真と、水着を着て立っている写真を見たことがあるけれど、小さいというより、がりがりに痩せていた。もしかしたら、ブッカーがデビューしたのは若干14歳なので、そう呼ばれるようになったのかもしれない。
次に、"Bronze Liberace"。言うまでもなく、リベラッチは、ブッカーに負けずとも劣らずの派手な衣装をまとったピアニストである。
それから、"The Pusher" という映画に出てくるドラッグ・ディーラーの名前から取った、"Gonzo" というのもある。
そして、ブッカーのお墓にも刻まれている、"The Piano Prince of New Orleans"。この呼び名について、ブッカーはこう語っている。
「あの昔の知事がずっと前に言ったようにさ、− なんて名前だったかな?Huey Long だっけ? 彼はこう言ったんだ。
"Every man a king"ってさ。もし、ある人が鍵盤を正しく扱ったなら、彼は鍵盤の帝王だ。でも、もし彼が、大金を作ることができるはずなのにもかかわらず、ただのもうからないピアノ弾きだったなら、彼はピアノ・プリンスにすぎないんだ。僕は、そういう部類にふるい落とされるってわけさ。このことは、ある時は僕を喜ばせて、微笑ませてくれる。そしてある時は、外側で笑わせて内側で泣かせるんだ」
それでも、人々は彼を王と呼んだ。このアルバムタイトルの 「マハラジャ」 というのは、インドの王のことである。我らの愛すべき "Bayou Maharajah" は、最後まで、富を持つことのない王であった。その頭上には、目に見えない王冠が、燦然と輝いている。
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