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納得の行かないのは、ヘンリー・バトラーである。 コンサートで使われたのは、かなり大きなグランドピアノで、会場も音響の良いホールであった。しかし、CDとライブがこれほど違う根本的な原因は、そんなことではないような気がする。ヘンリー・バトラーは、こう語っている。 「ジャズやブルースの演奏は、言葉にできない大切なものを、僕に表現させてくれるんだ。僕は、全身を楽器として使う。そして、そこにいるオーディエンスのひとりひとりのバイブ (vibe) に、演奏で返答するんだ」 これは、まさしく、彼のライブを観て私が感じたことそのものである。あの夜、確かに、ヘンリーは会場全体を呑みこんで演奏していた。彼の演奏は、「聴き手」 あってこそのものなのである。 ヘンリー・バトラーの弾いた曲は、ブッカーのリフを多用したオリジナルである。他の出演者は、ブッカーの曲 (或いは、ブッカーのレパートリー) を弾いたが、不思議なことに、ブッカーのスピリットを一番感じたのはヘンリーの演奏であった。彼のように自分の個性を主張してこそ、「ものまね大会」 にならずに、ブッカーのスピリットを伝えることができるのだ。 |
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