James Booker の地を訪ねて〜part 3

Charity Hospital

チャリティ・ホスピタル

 ここを訪れたのは、全くの偶然である。いくら私がジェームス・ブッカーをこよなく愛しており、今回の旅の主な目的が、ブッカーゆかりの地を訪ねるということだったとしても、チャリティ・ホスピタルは、その計画に入っていなかった。第一、ここはただの病院である。従業員以外で病院に行くのは、病気の人か、お見舞いへ行く人と昔から決まっている。それでは何故、この病院を訪れることになったかというと、偶然に見つけてしまったのである。

 Providence Memorial Park にあるブッカーのお墓を訪れた帰り道、私の乗ったバスが、チャリティ・ホスピタルの前を通過した。一瞬、降りようかと迷ったが、先に書いたようにただの病院であるし、わざわざ降りて訪れることもないと思い直して、バスに残った。しかし次のバス停で、ドライバーが何か叫んだのだ。どうやら、ここがこのバスの終点だったらしい。せっかくバス停ひとつの距離にいるのだから、ということで、歩いてチャリティ・ホスピタルまで戻ることにしたのである。入口では、持ち物検査があった。悪いことをしているわけでもないのに、なんだかどきどきしてしまう。

 中へ入ると、"emergency" の標示に従って進む。ニューオリンズまで来て、病院内を歩き回るなんて、まったく、物好きにもほどがある。しかも病気だとかお見舞いだとか、正当な理由があるわけでもないので、なんだか後ろめたくて、びくびくしてしまう。誰かに声をかけられたら何と言えば良いのだ?などと思っているうちに、着いた。"emergency room"、救急患者のための待合室である。20年前の11月8日、ジェームス・ブッカーはここで、この世を去ったのだ。誰にも気づかれずに、たったひとりで、苦しんで死んだのである。ああ、ジェイムズ、どうか安らかに眠ってください。素晴らしい音楽を、ありがとう。




in front of Charity Hospital's emergency room






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