Donuts

ドーナツ

 日本の外で暮らすようになって気付いたことだが、外国では、「甘すぎなくておいしい」 という感覚がない。これは日本ではよく耳にする表現だが、他の国では聞いたことがない。他の国と言っても、私が暮らしたことがあるのはフランスとイギリスだけではあるが、しかし、その他に旅行した国々でも、デザートはやはりとろけるように甘かったし、ギリシャやチューニジアのペイストリーも私は大好きで良く買うのだが、これらも砂糖を食べているかのように甘い。インドのペイストリーも、甘ったるい。そういえば、中国の月餅だって、かなりずっしりと甘いではないか。

 イギリスでは、"low fat" や "no added sugar" と書かれた商品はたまに見かけるが、日本のように 「甘さ控えめ」 というのは見たことがない。"no added sugar" と言っても、甘味料を使っているのだから、これは甘さの加減を主張しているのではなく、カロリーを気にする人、または何らかの事情で砂糖を取れない人へ向けたものであろう。こちらで
 「甘すぎなくておいしい」
なんて言ったら、
 「甘いものが甘くなくておいしいって、どういうこと?」
などと言われそうである。私はかなりの甘党なので、"Sweets must be sweet!" というこの考え方が、潔くて好きだ。

 これもまたイギリスでの話で恐縮だが、私の日本人の友人が、ホーム・パーティへ招かれ、手作りのケーキを持参した。それを見たホストの女性は、
 「カスタード!カスタードが要るわよねえ!」
 と、キッチンの戸棚を探し回り、カスタード・クリームの缶詰を見つけ出して、ケーキの上にたっぷりとかけたのであった。友人は、せっかく甘すぎないあっさりしたケーキだったのに、、、とがっかりしたのだそうだ。甘いものの上に、更に甘いものをかける。これこそが、スピリットである。ちなみに、この話を聞いて私が一番驚いたのは、カスタードの缶詰が、常備食のようにいつも戸棚にあるということであった。さすが、イギリス人である。

 さて、問題はドーナツである。村上春樹が 「個人的な親友」 と呼ぶ、あのドーナツである。私の泊まったホテル・ラサールでは、毎朝、ホテルのロビーに、無料のコーヒーとドーナツが用意されていた。
 「アメリカのドーナツなんて甘すぎるし、油っこいし、べたべたでふにゃふにゃしてるし、食べられたもんじゃない」
 というのを聞いたことがあるが、私は、この甘くて油っこくてべたべたふにゃふにゃのドーナツが大好きになってしまった。イギリスへ帰ってからも、このドーナツが忘れられなくて、店で見かけるたびについ買ってしまうのだが、どれもからっとしすぎていて、生地に弾力がありすぎる。あのあまーいふにゃふにゃしたドーナツを食べるためだけにでも、ホテル・ラサールへまた泊まりたいくらいである。  `



Yuki's dream






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