The James Booker Collection


Transcribed by Joshua Paxton


published by

Hal Leonard

  • Come Rain or Come Shine
  • Gonzo's Blue Dream
  • Junco Partner
  • Let's Make a Better World
  • Medley: Blues Minuet/
    It Will Have to Do Until Real Thing Comes Along/
    Baby, Want You Please Come Home
  • Papa Was a Rascal
  • Pixie
  • Pop's Dilemma
  • Put Out the Light
  • Tell Me How Do You Feel

 この本の存在を知った時点では、正直に言って、私はあまり期待していなかった。ジェームス・ブッカーのあの複雑な音楽を楽譜にするなんて、絶対に無理だ!と思っていたのである。おそらく、よくある簡略化された楽譜だろうと思いつつも、注文することにした。その頃の私は、ブッカーの音楽を弾く手がかりになるものを必死に求めていたのである。

 さて、本が届いて開いてみると、なんと、ブッカーの音楽がそのまま楽譜になっているではないか。ひゃー。すごい。なんだこれ。難しい。そうか、こんなふうに弾いてるんだ。そりゃ、CD聴いてもわかんないはずだよなー。などと言いながら、譜読みを進めることになった。

 この本のもうひとつの優れた点は、ブッカーの音楽スタイルの分析が載っていることである。ここでは、7つのスタイルに分けて (The Booker Groove, Stride, Ballads, Funk, Stride-Funk, Rock, Shuffle) ブッカーの音楽が説明されている。これは、この本に入っている曲以外を弾く時にも、とても役に立つ。
 "Junco Partner" のライナーノーツに載っている George Winston の分析は、いまいちピンとこなかったのだが、こちらは譜例がついているのでわかりやすい。この本の分析を読んでからは、George Winston の言いたいこともよくわかるのだけれど。

 採譜、分析にあたった Joshua Paxton は、彼自身、優れたピアニストである。この本における彼の最高に cool な点は、自分自身について、文字通り 「ひとことも」 触れていないことである。表紙に名前があるだけで、バイオグラフィーもディスコグラフィーも何もない。私などは、こんな機会があると、「ジェームス・ブッカーと私」 について (いくらなんでも、そんなベタなタイトルはつけないとは思うけれど、それにしても。)べらべらと書きまくってしまいそうである。

 私は、この本を買った頃、Joshua Paxton について何も知らなかったので、「この偉業を成し遂げた Paxton って、一体、何者?」 と思っていたのだが、そんな折に、"Offbeat" 誌に掲載された彼の記事を発見した。そこで、彼は、ブッカーの音楽の魅力について語り、この採譜について、「たった一小節に数時間を費やすことが、何度あったかわからない」 「時間のかかる、骨の折れる、けれども常に目を見張らされる作業であった」 と語っていた。そして、やはりこの人は cool だと私に思わせたのは、次の言葉である。

 「ブッカーの音楽が、スタンダード・ピアノ・レパートリーの一部でないことは、僕の考えでは、それは、罪だ」

 どこまでも cool な Joshua Paxton であった。




ジェームス・ブッカーを弾く!
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